その3 シチー

~キャベツのスープ~

 万里はこのように在プラハソビエト学校の食事を紹介している。このスープの中で、一番よく出てきたのが今回紹介するシチーだ。日本人の多くはロシアのスープの代表はボルシチだと思っているが、あれはもとはウクライナの料理。ロシアのスープといえばシチーなのだ。
 愛読書から引用する。

 ロシアでは今でも秋になると、キャベツ、キュウリ、きのこなどの野菜で大量の漬物を作り、長い冬の間のビタミン源とする。以前十月に訪ねた旧レニングラードの街角で、大きなトラックに積んだキャベツが売られている場面に遭遇したことがある。このキャベツの塩漬けで作るスープがシチーで、発酵した酸味の深い味わいがくせになる。

 この連載ではなるべく誰でも作れるレシピを書いていきたいと思っている。だから今回、ロシア風漬物作りから始めるのはやめて、糠漬けのキャベツを使ってみることにした。酸味が出てきた一週間以上の古漬け。これが案外おいしくできた。もちろん市版の古漬けやザワークラウトを買ってきてもよい。

〈材料〉5~6人分

牛肉(すね肉など煮込み用)400~500g、キャベツ1/8個、キャベツの糠漬け1/8個、玉葱1個、人参1本、ジャガイモ3個、ローリエ1~2枚、ラードまたはサラダ油、塩、コショウ、サワークリーム、ディル

〈作り方〉

(1)煮込み用の鍋に牛肉と水2000㎖を入れ、火にかける。煮立ってきたら、火をよわめ、ローリエを加え、灰汁を取りながらおよそ1時間煮込む。肉がやわらかくなったら取り出して、一口大に切り、鍋に戻す。
(2)玉葱、は薄切りにする。人参は拍子木切り、

キャベツは糠を洗い、ざく切りにする。ジャガイモは拍子木に切る。

(3)玉葱、人参はラードで軽く炒め、⑴の鍋にいれる。

キャベツ、ジャガイモも⑴に加える。30分ほど煮込む。
スープが煮詰まりすぎたら、水を適宜加える。

(4)塩、コショウで味を調える。漬物の酸味が少ない場合は好みでお酢を加える。
(5)器に盛り、ディルの葉とサワークリームを添える。