その11 アーモンドのタルト
ここに万里が書いているように、わたしたちは子どものころ、母の方針であまり甘いものを食べさせてもらえなかった。おかげでわたしが虫歯になって初めて歯医者に行ったのは35歳のときだった。母に感謝。でもその後、甘いものに目覚め、今は歯もすっかり傷んでしまっている。
わたしがイタリアで働いた2軒目のレストランは、手打ち麺を得意にしていて、毎日、様々な種類の麵を提供していた。そして麺を作るのはパティシエの仕事だった。ラヴィオリなど詰め物入りの麺の場合、コックが具を作り、パティシエは打った麺にその具を包んでラヴィオリにして、コックに戻す。手打ち麺を覚えたかったので、この店ではパティシエとして働かせてもらった。当然麵だけでなく、お菓子も作った。
帰国後、この店で覚えたお菓子を家族にふるまったが、万里が一番気にいったのが、このアーモンドの焼き菓子だった。エッセイに書いているように万里は焼き菓子が好きで、ときどき自分でパウンドケーキを焼いたりしていた。
このアーモンドのタルト、ご覧になればお分かりになると思うが、フランス菓子の定番、アマンディーヌである。わたしの働いたお店のレシピは、オーソドックスなアマンディーヌに比べて、砂糖とアーモンドの分量が多く、小麦粉も少し入っている。
「お土産に持っていくから」、と万里に頼まれてずいぶん焼いたものだが、注文が途絶えてからはもっぱら基本の、バター、砂糖、卵、アーモンドが同量のレシピで作るようになり、自分が覚えてきた方はすっかり忘れていた。今回、ほぼ40年ぶりにむかしのレシピを引っ張り出して焼いてみた。これはこれでいけるのでおためしを。
| 材料 |
| タルトの台 |
| 薄力粉:150g粉、砂糖:60g、無塩バター:90g、卵黄:大1個分 |
| 塩ひとつまみ、水少量、バニラの莢1/2本(あれば) |
| アーモンドクリーム |
| アーモンドパウダー:100g、薄力粉:35g、粉砂糖:100g |
| 無塩バター:70g、卵:2個 |
| その他 |
| 直径22センチのタルト型 |
| アーモンドスライス、アプリコットジャム、砂糖、水 |
作り方
あらかじめバターを室温に置いて軟らかくしておく。
小麦粉はふるっておく。
卵も室温に置く。
〈タルトの台を作る〉
(1)バターをボウルに入れよくすり混ぜる。
(2)ここに砂糖を2~3回に分けて加えてまぜる。
(3)卵黄と少しの水、塩ひとつまみを加え、よく混ぜる。
バニラの莢に切れ目を入れて中の種を加える。
(4)ふるった小麦粉を加え、切り込むようにざっくり合わせる。(あまり練らないように)
(5)粉がおおよそ混ざったら、台の上でなめらかになるまで軽くこねる。これをラップで包み、冷蔵庫で休ませる。最低1時間。
(6)タルト型よりひとまわり大きくのばして台に敷く。
フォークの先でピケする(タルト生地に小さな穴をあけること)。再び冷蔵庫に入れて休ませる。
〈アーモンドクリームを作る〉
(7)バターをボウルに入れ、泡だて器で混ぜる。
(8)砂糖を2~3回にわけて加え混ぜる。
(9)溶いた卵を少しづつ加え、その都度しっかり混ぜる。バターと卵は分離しやすいので、少しづつ合わせること。
(10)ここにアーモンドの粉末、つづいて小麦粉をさっくり混ぜる。
〈タルトを焼く〉
(11)冷蔵庫で休ませていた(6)のタルトの生地の上にアーモンドクリームをのせる。均一になるように、台の上に数回トントンと落とす。
(12)アーモンドスライスをのせ、170℃に予熱したオーブンで40~45分焼く。
(13)小鍋にアプリコットジャム、水、砂糖を大匙1杯ずつ入れ、火にかける。
グツグツいったらよく混ぜて、火から下ろす。
刷毛で、焼けたケーキに塗る。
焼き菓子は、焼き立てより翌日以降の方がおいしいですよ。
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